アメリカ・ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市・CES2025で1月7日、HONDAが満を持して発表した電気自動車(EV)・HONDA 0(ゼロ)。
昨年のCESではガルウイングを携えた先進的な「コンセプト」の発表だったのに対し、2025年は実際の製品化に向けた、より具体的な技術と機能の詳細が明らかにされました。

ASIMOの技術を継承する次世代OS
HONDA 0では、世界で最も有名なヒューマノイドロボットである「ASIMO(アシモ)」の技術を進化させた新しい車載OSが採用されます。
20年前のCESで発表されてから2022年の引退まで、世界中の人に愛されたHONDAのヒューマノイドロボット・ASIMO。「Asimo OS」と名付けられたこのシステムは、外部環境の認識と周囲の人の意図理解という、ASIMOで培われた技術を車両に応用しています。
今年のCESでは、他にも様々な「人に寄り添うAI」「自動モビリティ」が発表されていましたが、ロボティクスの精神がクルマに宿り世界展開していく未来は、日本人として誇り高い気持ちになりますね。
進化を続ける自動運転技術
ASIMO OSと並ぶもう一つの進化の柱か、自動運転技術です。
HONDAの自動運転といえば、2021年モデルのレジェンドに搭載されたレベル3自動運転の”HONDA Sensing Elite”が記憶に新しいですが、HONDA 0はレベル3自動運転の完全実用化を目指し、運転中にドライバーが目を離すことのできる「アイズオフ」技術の信頼性を向上させていくそうです。
「アイズオフ」技術が実用化すれば、運転はクルマが行い、車内にいる人間はエンターテイメントを楽しんだり、仕事をしたりできるようになる模様。それはそれで「運転中でした〜」って言えなくなったり、ちょっと大変かも…?
なお、白線が見えづらい場所でも周辺の環境から道路の形状を認識して走行したり、車線変更を含む緊急時の回避など、従来の自動運転機能では解決が難しいとされてきたポイントも強化されていくとのこと。レーンに急に割り込んでくる車を減速して避けたり、前方の工事現場を認識して迂回するなど、あらゆる可能性を想定した自動運転の提供を想定しているそうです。
ガジェット好きにはたまらない?ソフトウェアで進化し続けるクルマへ
HONDA 0は「ソフトウェアデファインドビークル」。
簡単にまとめると、クルマの中身(ソフトウェア)がまるでPCやスマホのOSのように、ソフトウェアアップデートで運転支援などシステムがどんどん進化していくプロダクトです。
そして、ただクルマの機能がアップデートされるだけでなく、将来的にはよりドライバーごとに最適化していくものになるのだそう。そしてこの仕組みを支えるのは、日本の半導体メーカー・ルネサス エレクトロニクス。
HONDAはこの日、HONDA 0の発表と同時に、ルネサス社との高性能 SoC(システム・オン・チップ)の開発契約を締結を発表。開発するSoCは業界トップクラスとなるAI性能2,000 TOPS・電力効率20 TOPS/Wの実現を目指し、HONDA 0シリーズへの搭載を目指しています。
2種類のボディタイプで展開

HONDA 0のフラッグシップモデルはシビックやアコードなど、HONDAの歴史の中でも代表車が数多く生まれたサルーン(セダン)タイプ。HONDA 0 Saloonはサルーンの高級感を持ちながらも車高が低くスポーティな印象です。サルーンカーの弱点とされがちな車内スペースも気になりません。

2024年のコンセプトモデルで「Space-Hub」として発表されていたマルチパーパスビークルは、SUVとして具体化されました。HONDA 0 SUVで特徴的だったのはボリュームのあるなだらかなボディ。シンプルながら重厚感のある様子は海外メーカー車のような趣があります。
筆者のような各種センサーが搭載されるより前の時代の旧車〜ネオクラカーに乗っている人間にとってはどうしても気になるポイントである、物理的な窓からの後方視界は限定的ですが、センサーや先述の先端技術があれば全く問題にもならないことでしょう。こうやって新しい技術を見ると、新しいクルマが欲しくなりますね!

また、どちらの車種も、電池の設置によって重心が低くなるEVの車体バランスの強みを活かした、開放的なガラスルーフとなっており、基調講演内で公開されたコンセプトムービーでも登場人物が車内から空を見上げるようなシーンがあったことが強く記憶に残りました。
HONDA 0は2車種ともに2026年前半、北米を皮切りに日本・ヨーロッパなどで順次一般販売を開始予定とのこと。販売方法など続報はHONDA 0ティザーサイトを眺めながら待ちましょう!