2024年12月11日から12日にかけて、韓国最大級のスタートアップイベント「COMEUP 2024」がソウルのCOEXで開催されました。
COMEUPは、国内外のスタートアップと投資家が一堂に会し、革新的な技術やビジネスモデルを共有する場として知られています。単なるショーケースの域を超え、新たなビジネスチャンスを創出する重要なプラットフォームとして成長を続けています。今年は特に「AI」「グリーンテクノロジー」「ヘルステック」といった、次世代を担う分野に注目が集まりました。
Gadgetouchは前回に引き続き今回も審査員として参加。3つの異なる分野からスタートアップを選出し、アワードの盾を授与しました。今回の記事では、Gadgetouchが選んだ3つの企業について選出に至った理由とともにお伝えします。
まず最初に選んだのは、ArtliveのHaptic clayです。粘土造形の感覚をデジタル空間で完全再現する次世代3Dモデリングツール「HAPTIC Clay」は、VRとハプティック技術を組み合わせ、従来のキーボードやマウスによる操作から脱却、本物の粘土に触れているかのような感触を実現。開発チームは、人類が3万年以上にわたって培ってきた彫刻技法に着目し「デジタルツールは便利な反面、人間本来の創造性を制限してきた」と指摘。
直感的な手の動きだけで自由な造形を可能にすることで、このギャップを解消し、没入感の高い新しいデザインプロセスを確立。モニターでの作業にも対応しており、VR機器を持たないユーザーでも利用可能で、3D業界の新たな標準ツールとなる可能性を秘めています。
受賞理由
「デジタル技術に触覚の要素を加えたことで、ユーザー体験を根本から変革しています。デザイン業界においては、直感的で没入感のある操作性がプロフェッショナルだけでなく初心者にも親和性を提供し、新たな市場を開拓するポテンシャルを持っており、教育分野での応用は、子どもたちが創造力を育むための理想的なツールになると感じました。この革新性と実用性の両立が評価され、今後さらに多くの分野で活用されることを期待しています。」
つづいての受賞は、CUBIGです。Cubigは、AI技術とデータセキュリティソリューションを専門とする企業です。特に、オリジナルデータを直接扱うことなく、その統計的特性や相関関係を保持した高品質な合成データを生成する技術を持っています。この技術は、製造業、金融、ヘルスケアなど、プライバシーが重視される分野での利用が期待されています。また、複数のデータソースを安全に統合し、プライバシーを保護しながらデータの価値を最大限に引き出す仕組みを提供しています。
さらに、Cubigが開発したプラットフォーム「azoo」は合成データを使った取引や共有を可能にする画期的な技術。このプラットフォームでは、データの売買や共有を安全かつ効率的に行えるだけでなく、複数のデータセットを組み合わせ、分析することも可能です。また、取引されるデータの品質や信頼性を保証する証機能も備えており、データ活用におけるリスクを大幅に軽減。AIやデータ駆動型ビジネスにおける課題を解決し、安全で効果的なデータ活用を実現するための重要なパートナーとなると考えられます。
受賞理由
「差分プライバシーを活用した合成データ生成は、AI時代における重要なテーマであり、データ駆動型市場で大きな成長可能性を秘めています。特に、金融やヘルスケアといった規制の厳しい分野での応用が期待されます。」
最後は教育分野から、韓国企業Tublet KORIA。同社はオンラインの教育システム「Upgrade」を提供しています。このサービスはアイビーリーグなど世界トップクラスの大学生による1on1の個別指導サービスで、世界中の学生と優秀な大学生チューターをつなぐというもの。チューターの知識や経験を、生徒一人ひとりに合わせた形で共有することができるほか、従来の対面指導の壁を越え、場所や時間の制約を受けることなく、質の高い個別指導を受けられるのが特徴です。
オンライン上で完結する1対1の学習支援により、生徒は自分のペースで学習を進められます。また、トップレベルの大学生との交流を通じて、学習意欲の向上や将来の進路選択にも良い影響が期待できます。
受賞理由
「教育分野において、1対1のオンラインチュータリングは、グローバルで高い需要を誇っています。名門大学のメンターと直接つながることができる点や、柔軟なクレジットベースのシステムは、このサービスを他と差別化する大きな強みとなっています。教育の可能性を広げる革新的なアプローチであり、今後さらに多くの学習者に価値を提供することが期待されます」
今回のCOMEUP 2024で選出した3社は、それぞれの分野で革新的なアプローチを見せていました。Artliveは触覚技術で創造性の新たな扉を開き、Cubigはデータセキュリティの未来を提示し、Upgrade(Tublet KORIA)は教育のあり方そのものを変革しようとしています。
特筆すべきは、いずれも「人間中心」の視点を大切にしている点。テクノロジーを追求しながらも、それを使う人々の体験や価値を最優先に考えた製品開発を行っています。
来年のCOMEUPでは、これら企業がどのように成長を遂げているのか、また、新たにどのような革新的なスタートアップと出会えるのか。新たなスタートアップ企業と出会えることを楽しみにしています。
以上、GadgetouchによるCOMEUP2024、メディアアワードリポートでした。