2025年6月24日、株式会社PFUは都内で新製品発表会を開催しました。発表されたのは、ドキュメントスキャナー「ScanSnap」シリーズの新たなフラッグシップモデル「ScanSnap iX2500」です。

開会にあたり、代表取締役社長の平原英治氏が登壇。PFUが展開するスキャナー製品は、紙の情報をデジタル化することで、現場にリアルタイムの価値を提供してきたと述べました。ScanSnapは世界シェアNo.1を維持し、2024年7月には累計出荷台数1600万台を超えたことを報告しました。

平原氏はScanSnapの進化の軌跡についても触れ、PFUが2001年の「ワンプッシュPDF」から始まり、OCR対応、コンパクト設計、Wi-Fi・クラウド対応、タッチパネル操作など、その時代の課題に応えるかたちで機能を進化させてきたと語りました。そして「AIの時代に入り、ScanSnapも次のステージに進みます」と締めくくりました。
“紙をAIの学習データに”という使命

続いて、取締役常務執行役員の宮内康範氏が登壇。PFUが展開するドキュメントイメージング事業の強みや、今後の製品開発の方向性について説明しました。AIの進化に伴い、質の高い学習データの確保が今後の課題になる中で、「紙の情報」をAIが活用できるかたちで提供することが、PFUの使命であると強調しました。
特に生成AIの急速な普及により、AIが学習に利用できる高品質なデジタルデータが2026年から2028年の間に枯渇する可能性を指摘。既存のウェブや企業内データは短期間でAIに消費され尽くし、AIの自己成長が停滞する恐れがあると説明しました。
PFUはこの課題を「リアルなアナログ情報」で補う必要があると捉え、特に紙文書を即座にデジタル化し、AIに渡せる構造化データへ変換することが自社の使命であると強調。単にスキャンしてOCRをかけるだけでは十分ではなく、文字や図表を抽出し、AIが正確に解釈できる形式に仕立てる処理が欠かせないと述べました。
PFUは40年以上培ったスキャナー技術を基盤に、紙を高画質に取り込み、メタデータ付与やデータ抽出を自動化する仕組みを整え、AI時代の「学習データ供給インフラ」として事業を進化させる考えです。
新機能が支える「いつものスキャン体験」

今回発表されたScanSnap iX2500のコンセプトは「時・場所・デバイスを越えて、いつものスキャン体験をどこでも再現する」。USBやWi-Fiで接続するだけで、ユーザーの設定が即時に本体へ反映される仕組みを備え、スマートフォンをかざすだけで設定を適用する機能も搭載しています。
また、業務用スキャナー向けに自社開発した次世代SoC「iiGA(イーガ)」を搭載、毎分45枚の高速スキャンと最大100枚の原稿セットに対応しています。画像処理性能も大幅に進化し、PCレスでも快適なスキャン操作が可能になりました。
“AIの学習データとして使用したい”というユーザー目線で考えると、スキャナーのスピードだけでなく、画像が高精細であることは非常に重要なポイントと言えるでしょう。

さらに、操作性にも新たな工夫が。まず、スキャンボタンが「物理ボタン」として復活。その分、5インチの静電容量式タッチパネルの視認性が高くなりました。保存先にはMicrosoft Teams、Notion、iCloudなどとの連携も追加され、スキャン後のデータ活用を支援します。
専用ソフト「ScanSnap Home」も同時にアップデート。PC・モバイル間でデータを同期する「Data Sync」機能で、オフィスや自宅など異なる環境でも、同じデータをスムーズに扱えます。
場所も時間も越えて、日常にスキャンが溶け込む
新しいコンセプトの新製品、ScanSnap iX2500の活用シーンは様々です。たとえばオフィスでは、スキャンした契約書を Microsoft Teams や Notion に直接保存。ファイル共有の手間が減り、チーム内での確認ややりとりがスピーディーになります。TeamsのチャンネルにPDFが自動的に共有されれば、レビューやフィードバックの抜け漏れも防げます。
在宅勤務の日には、スマホを使って家計用のレシートや学校の配布物を手軽にスキャン。ScanSnap Homeの「Data Sync」機能により、オフィスでスキャンしたデータも自宅のPCやスマホから確認・整理できるので、シームレスに作業が可能です。コワーキングスペースに設置された iX2500 を使う場合、ノート PC を Wi-Fi 接続するだけで、自宅の「My ScanSnap」設定がすぐに反映されます。出先で発生した資料やパンプレットをまとめて処理できるので、紙を持ち帰る必要がありません。また、経費精算が必要な場合も、スムーズにデータを送信できます。最大毎分45枚の高速スキャンで、時間のロスも抑えられるでしょう。
ScanSnap iX2500の魅力は「いつでも・どこでも」自分の環境が手に入ること、邪魔になりがちだが重要な情報を持っているオンリーワンの紙を、どこでもデータ化できることでしょう。
これを踏まえて、PFUでは「ScanSnap協力スポット共有パートナー」の募集を開始。様々な場所にScanSnapを設置するパートナーを募集するプログラムです。

販売推進統括部長・山口篤氏によると、共有パートナーによるトライコーナー(協力スポット)」を、今後さらに全国へ広げていく方針で、現在約50カ所設置されているトライコーナーを、将来的には1000カ所規模に拡大する計画を明かしました。

顧客が「今スキャンしたい」と思ったその場で利用できることを目的に展開、量販店との連携を強化しつつ、必要な機材や案内をまとめたキャスター付きの設置ユニットを雑誌形式で提供し、導入のハードルを下げていく予定です。初年度は試験的な展開を中心に、1年のスパンで本格的な拡大を目指すとしました。
また、設置場所の選定については、カフェ、ショッピングモール、ワーキングスペースといった「人が集まり、思い立った時にスキャンできる環境」を重視、仕事の合間に書類をその場でデジタル化し、すぐに次のタスクへ移れるような活用シーンを想定しているとのこと。
PFUが描く“スキャンのある日常”と社会実装
40年以上にわたり紙に向き合ってきたPFUらしい今回の新製品、単なるスキャナーではなく、紙の情報を構造化データとしてAIに提供する”データの入り口”としての役割も担う存在のようです。
ScanSnap iX2500は6月24日から販売開始。PFUダイレクトでの販売価格は税別54,000円(税込59,400円)です。カラーバリエーションはホワイトとブラックの2種類。
本体には再生プラスチックを25%以上使用し、梱包材にはバージンプラスチックを使わないなど、環境への配慮も示されています。
今回、AIのためのスキャナーという新製品コンセプトから、PFUでは「ScanSnap AI価値創造アイディアコンテスト」を実施。スキャンデータとAIを組み合わせたアイディアを募集し、グランプリには30万円分のPayPayポイントが贈られます。
製品の詳細、コンテストなどについては公式サイトをご参照ください。