ITジャーナリスト松村太郎です。今回、M2搭載の13インチMacBook Proに一足早く触れる機会を得ましたので、先行レビューをお届けします。
今回レビューしたのは、M2 8コアCPU・10コアGPU、ユニファイドメモリー8GB、256GB SSDというベースモデル、標準的なものです。
M2は、第2世代Apple Siliconとして登場し、グラフィックスのコア数が8から10に増えたことと、最大のメモリが16GBだったものが24GBに増え、帯域幅も向上したことなどが、大きな進化のポイントとして挙げられます。
非常に基礎体力が上がってきたというのが、M1からM2への進化、変化と言えるでしょう。ただ、製品としての13インチMacBook Proは、デザインが変わっておりません。
「何でお前出てきたんだ?」と言う方もいらっしゃるんですが…まずは、開封しながら見ていきましょう。
開封の儀
13インチMacBook Proの箱なんですが、今までと変わらず、わりとコンピューターの形としては薄型です。
ただ、最近のアップル製品らしからぬ点は、周囲にビニールが付いてるところでしょうか。なぜまだ付いてるんでしょうね。
iPhoneからは、ビニールを取り去って、プラスチックの使用量を減らしたとアピールしていたのですが、Macにはまだビニールが付いています。
iPhoneは防水ですが、Macは防水じゃないんですよね。そういうのもあるのかもしれないですね。
箱をパカっと開けました。
中はもう完全にプラスチックフリーになっています。製品は紙のフィルムで包まれていますね。
製品を引き上げると、箱の中は、足にくぼみがあり、中で製品が動かず安定するようになっています。発泡スチロールや余計な段ボールの型を使わないための工夫です。こういうところが凝ってるなと思いますね。
付属品は、まず薄型の封筒から。Designed by Apple in Californiaと書いてあるスリットなんですが、ちゃんとボディカラーのスペースグレーと色合わせしたアップルロゴのステッカーが付いてます。
電源アダプタは、MacBook Airの上位モデルには35W、デュアルのUSB-Cポートの新しいACアダプターが付いてきます。今まで通り61W…ではなく、67Wになっています。ちょっとパワーアップしてるというところでしょうか。
本体はデザインが変わらず
では、本体。紙に包まれているので、取り出します。
こちらはスペースグレイですね。もう一つの色はシルバーです。
新型のM2 MacBook Airにはスターライトとミッドナイトが加わり、よりバリエーションが拡がっている印象がありますが、MacBook Proはシンプルに2色のみです。
パカっと開けました。何にも変化無さそうに見えると思うんですけれども…実際変化ないです。13.3インチのRetinaディスプレイ、これフチなしではございませんので、このディスプレーの上の部分にしっかりと黒い帯が入っております。
今月WWDC22で発表されたMacBook AirのM2モデルは、ディスプレイの上部がぐっと64ピクセル広がって、13.6インチに拡大しています。
加えて、今まで13.3インチのディスプレイは、Proの方が最大輝度が明るかったんですが、今度はAirも500ニトに明るくなりました。
それを考えると、ディスプレイという視点では13インチProを選びにくくなったのは事実です。
そして皆様、大好きなTouch Barでございます。
個人的にはTouch Barって好きなインターフェースだったんです。格好良くないですか?メインの画面が上にあって、下にも画面があるんですよね。しかも別々のソフトウェアが動いてる。
GarageBandやiMovie、あるいはより高級なクリエイティブソフトウェアで、タッチ操作を使ってツマミを調節できる部分も直感的でしたし、タッチスクリーンではないMacに、タッチ要素を取り入れるアイディアは、良かったのではないでしょうか。
ただし、最新のMacBook Pro 14インチ・16インチではTouch Barが廃止されいるのを見ると、重要なインターフェイスの座を勝ち取ることができなかったのでしょう。
M2の実力
M2搭載のコンピュータとして、初めてリリースされるのが、この13インチMacBook Proです。その性能の上昇幅には驚かされました。
Geekbench 5のスコアで、シングルコア1900前後、マルチコア9000前後、グラフィックス(Metal)で30000前後という数字をはじき出しました。これらの数値はM1に比べて、マルチコアで約25%、グラフィックスでや42%の性能向上を確認することができます。
クロック周波数はM1ファミリーの3.2GHzから、M2では3.49GHzになっています。Apple Siliconの製造を引き受けるTSMCの第二世代5nmプロセス(N5P、N4)は、同じ設計を共有しながら、同じ消費電力で最大5%のクロック周波数向上、もしくは同じ周波数で最大10%の低消費電力化を実現する技術です。
アップルは製造プロセス以外の改善も加えているとしており、これは「クロックを9%向上させながら、バッテリー持続時間を維持することに成功した」と見ることができます。
加えて、第二世代ニューラルエンジン、GPUコアの増加、メディアエンジンの搭載、メモリ帯域幅の100GB/S化など、様々な高速化の改善を施しており、第二世代Apple SiliconのベースモデルであるM2ができあがったことが分かります。
13インチMacBook Proの優位性
M2搭載の13インチMacBook Proと同じくM2搭載MacBook Airを比較していきます。
デザインのフレッシュさやディスプレイ、サウンド、カメラ、MagSafe3など、新筐体でハードウェアの刷新を実現したMacBook Airが数多くの部分で秀でています。
その一方で、MacBook Proの優位性は、アクティブクーリングシステムとバッテリー持続時間です。
まずアクティブクーリングシステムは、ファンによってマシン内部を冷却する仕組みが備わることで、高負荷時の排熱を実現し、パフォーマンスを熱によって制限されず持続させることができます。
例えば、屋外でMacを利用する写真家の方、実験や観察データを記録する研究者など、夏場も含め屋外である程度の負荷の処理を行う可能性がある場合、この冷却機構の有無で差が出てくる可能性があります。
加えてバッテリー。動画再生でMacBook Airが18時間であるのに対し、13インチMacBook Proは20時間。ワイヤレスインターネットではそれぞれ、15時間と17時間となっています。
動画再生こそ、16インチMacBook Proの21時間には叶いませんが、倍近くバッテリーを積んでいるからこそ。実際の作業で比較すると、MacBookシリーズの中で最もバッテリー持続時間が長く利用できるのが、13インチMacBook Proと位置づけることができます。
チョイスとしては…
2021年モデルの14インチMacBook Proと16インチMacBook Proは、全く新しいデザインに生まれ変わりました。より強力なM1ファミリーが採用され、価格もパワフルに、ベースモデルのM1 Pro搭載14インチモデルが27万円以上という価格です。
今回のM2搭載13インチMacBook Proは、Intel時代を含め、従来のデザイン・テイストを引き継ぎながら、チップの性能向上で商品力を高めようというアプローチを採っており、先述の性能が176,000円から手に入る点は、冷静に見ると、結構な魅力を放っているのではないでしょうか。
確かにデザインや新しさにこだわればMacBook Airを選ぶでしょう。10万円の価格差があってもより性能を追求するなら、14インチMacBook Proが視野に入ります。
しかし、Geekbenchでマルチコア1万に迫る性能と、MacBookシリーズで最もバッテリー持続時間を稼げるスタミナ、そして14インチより10万も安いのにメディアエンジンを搭載し動画編集に大きな貢献をする。M2 MacBook Proは、そんなマシンに仕上がっています。