今年3月にM3 Ultraチップを搭載したMac Studioが発売され、現行のMacシリーズに搭載されるチップが出揃った。M4、M4 Pro、M4 Maxに続いてM3 Ultraという一世代前のM3シリーズのUltraチップが出てきたのは意外だったが、Thunderbolt 5などが搭載するなど改良も加えられているので、現時点で最高峰のチップといえるだろう。
今回は、M4搭載MacBook Air、M4 Pro搭載Mac mini、M4 Max搭載の16インチMacBook Pro、M3 Ultra搭載Mac Studioのレビュー機を試すことができたので、Macで動画編集という観点から比較検証をしてみた。動画編集用のMac選びに悩んでいる方の参考になれば嬉しい。
PugetBenchによるベンチマーク
最初の検証はPugetBenchによるベンチマークだ。PugetBenchは、Premiere ProやDaVinci Resolveなどに対応したベンチマークソフトで、ただ負荷を与えるだけのベンチマークではなく、実際のクリエイターのワークフローを複数再現して負荷をかけることで、実際の使用感に近いベンチマークスコアが得られるのが特徴だ。
PugetBenchのOverall Score Basic(総合スコア)は以下の通りだ。

- M4(MacBook Air):5803
- M1 Max (MacBook Pro:参考): 6954
- M4 Pro(Mac mini):9126
- M3 Max (MacBook Pro:参考): 10364
- M4 Max(MacBook Pro): 12169
- M3 Ultra(Mac Studio): 14498
今回は参考になればということでM1 MaxとM3 MaxのMacも用意して同様のテストをしてみた。数字を見るとやはりチップの世代そして、Max、Ultraの順にやはりスコアは高くなり、この辺りは順当と言えるだろう。

さらにPugetBenchのパフォーマンスに特化したスコアを見てみよう。こちらはM1 Max(MacBook Pro)を基準にどのくらい高速かを示したグラフだが、M3 Ultra(Mac Studio)は108.5%の高速化ということでやはり相当パワフルなことがわかる。そしてM4 Max(MacBook Pro)も75%高速化しており、M1 Maxから2世代経ることでこのぐらいのスコアの上昇があるというのは興味深い。
もう一つM4チップについては、M1 Maxより16.6%遅いという結果となっているが、チップの特性が違うというのがこの差を生んでいるとは思うが、ベーシックモデルとなるM4チップでも2021年当時の最高峰チップにこれだけ迫っているという見方もできるのかもしれない。
実際の4K動画書き出し時間を比較
続いては、Gadgetouchで実際に公開している動画の書き出し(エンコード)時間を比較してみた。比較に使った動画は「iPhone 16eを語り尽くす41分!iPhone 16シリーズ誰にどれがオススメ?」という41分41秒の4K H.265の動画だ。
この動画を見てもらうとわかるのだが、特に特別なエフェクトなどが使っていないシンプルなものだ。ただ、音声は3人それぞれ別撮りしたものを使っていて、さらに40分以上という長尺なのが特徴だ。エンコード自体はかなり負荷のかかる作業だが、それが長時間続くことでチップの性能や各Macの冷却性能における影響もわかるのではないかと実施した。
検証結果は以下の通り。

- M3 Ultra(Mac Studio): 6分16秒
- M4 Max(MacBook Pro): 10分43秒
- M4 Pro(Mac mini): 20分30秒
- M4(MacBook Air): 30分39秒
- M1 Max (MacBook Pro:参考): 15分29秒
このベンチマークでは、純粋なパフォーマンスとしてM3 Ultra(Mac Studio)が圧倒的なスコアを示し、M4 Max(MacBook Pro)M4 Pro(Mac mini)と続く。比較としてM1 Max (MacBook Pro)も用意したが、M4 ProはM1 Maxより5分ほど書き出し時間が多くかかってしまったのが意外な結果だ。
書き出し時間の速さ順は M3 Ultra > M4 Max > M1 Max > M4 Pro > M4 となり、PugetBenchのスコア順とは一部異なる結果となった。
これの要因として考えられるのが、Mシリーズチップに搭載されているMedia Engineの中にあるVideo Encode Engineの数だ。

M4、M4 Proは1基となっているのだが、M4 Max、M1 Maxには2基搭載されている。M3 Ultraについては4基もある。これはM3 Maxチップを2つ繋げたものがM3 Ultraになっているから単純に2倍になっているのだが、M4、M4 Proと比べると大きな違いだ。
もちろんそれぞれCPUのコア数、GPUのコア数が違っていたりする点も大きいのだが、こと動画の書き出しという部分になるとこのVideo Encode Engineの数による影響力が大きいと感じる。それでいくとM3 Ultra(Mac Studio)の6分16秒という驚異的な記録も、M4 ProよりM1 Maxの方が書き出し時間が速いというのも納得できる。
もちろん今回のテストではノート型とデスクトップ型が混在しているので完全にイコールな環境ではないが、それぞれ僅差というより大きな差が出ているので傾向は変わらないとみていいだろう。
動画編集をするならどのMac、チップを選ぶべき?
今回は実際のワークフローを再現したPugetBenchと、実際の動画の書き出し時間を計測する二つのベンチマークをしてみた。さらに実際にそれぞれのMacを使って編集作業してみての実感値も込みで、動画編集をするならどのMac、チップを選ぶべきかを考えてみたい。
まず、M4チップを搭載したMacBook Airだが、編集時のもたつきはあまり感じず、カジュアルな動画編集(VLOGなど、カット編集中心でエフェクト少なめ)を行う場合であれば十分なスペックだと感じた。もちろん書き出し時間はかかるので、そこのタイパは考える必要があるが、バッテリーの持ちなどを考えてもコスパは最も良い動画編集マシンといえるだろう。
バランスの取れた性能だったと感じたのは、M4 Pro搭載のMac miniだ。非常にコンパクトながらパワフルに動作する。そしてコスト的にも抑えられるし、動画書き出し時間もM4 MacBook Airに比べたからかなり高速だ。家でじっくり動画編集をするという人にはオススメできる。
ゴリゴリの動画編集(4K編集やエフェクトを多用する場合など)をメインで行うなら、個人的にはM4 Maxチップを搭載したMacBook ProやMac Studioをオススメしたい。当然価格は高価になるのだが、このマシンを使うことで、総合的な作業効率が高くなり、よりクリエイティブなところに時間が使えるというのはかなり大きい。トータルの時間を買うといういい方もできる。特にMac StudioのM4 Max版がその中でもコスパの良い選択肢になるだろう。
そして、全てを求めるのならやはりM3 Ultraを搭載したMac Studioだろう。拡張性も豊富であること、そしてやはりチップの性能が今回のベンチマークを見ても圧倒的だ。多くのエフェクト・トランジションなどを使っても、長尺であろうとも、サクサク動き、作業時間を劇的に短縮できるのは大きなアドバンテージとなる。これはまさにプロフェッショナル向けのMacといえるだろう。
今回は動画編集という点にフォーカスした検証だったが、それぞれの用途によって選ぶチップは変わるはずだ。動画でもこの検証を公開しているので、皆さんのMac選びの一つの参考になれば個人的に嬉しい限りだ。