
Appleは5月9日、iPhoneのみを使って写真や映像を撮影するキャンペーン「iPhoneで撮影 ー Shot on iPhone」の一環として、是枝裕和監督が全編iPhone 16 Proで撮影した短編映画「ラストシーン」を公開した。今回は、公開に先駆けて行われたプレミア試写会のレポートもお届けする。

「ラストシーン」は、鎌倉の街を舞台にした是枝監督初のタイムトラベル・ラブストーリー。「未来に何が残り、何が消えるのか」をテーマに仲野太賀さん、福地桃子さん、さらに黒田大輔さん、リリー・フランキーさんが出演している。
iPhoneで撮影するというチャレンジ

今回はなんといっても全編iPhone 16 Proで撮影されたというのが大きなトピック。是枝監督は、職人的なこだわりを持つ瀧本カメラマンが面白がってくれそうだと思って挑戦を決めたと話し、作品の中にもある急速に変わる映画やドラマの未来について、作り手としてどこまでついていくか判断を迫られているとし、道具が変われば表現が変わると述べ、今回のiPhoneで撮影するという試みは、「プロとは何か」を考えるきっかけになったと話していたのが印象的だった。


是枝監督作品初出演となる仲野太賀さんは、撮影される側の感想として、iPhoneによる撮影によって機材からのプレッシャーや圧がほとんどなく、リラックスして役に入ることができたと語り、福地桃子さんも撮影の初日がクライマックスのシーンで緊張感があったものの、いい意味で圧を感じない撮影だったと話していた。
黒田大輔さんは、iPhone撮影だからといって普段と違うと意識して違いを感じることはほとんどなく、無意識・自覚なくに演技できたことがすごいと感じ、撮られる側と撮る側のボーダーが薄いなという感覚を述べていた。

リリー・フランキーさんは、自分が10代の頃に映画監督を目指すにはお金が必要だった時代とは異なり、iPhoneがあれば誰でも映画監督になれる「新時代」だと話していた。
iPhone 16 Proの機能を生かした撮影

今回の映画の撮影ではiPhone 16 Proの機能として、シネマティックモードやスローモーション、5倍ズームなどが効果的に使われていて、iPhoneで撮影したと言われなければ普通の映画と見分けがつかないほどだが、その中でも是枝監督はアクションモードには驚いたと話していた。
アクションモードで撮られた部分は本編でぜひ確認してほしいが、通常の映画で同じようなシーンを撮る場合は多くの人手と機材が必要でお金もかかるが、これが手持ちでできてしまったことに本当に驚いたと語っていた。

最後に是枝監督は、今回はとにかく「やったことのないことをやってみよう」ということで、短編、タイムトラベル、新しい機材など、様々なチャレンジが楽しかったと話し、若い役者さんである仲野さん、福地さんの芝居がとても見事で、初日に行われたクライマックスのシーンでの二人の演技を見て、「すごい!これがラストに待っているのであれば、前半は軽やかに遊べるな」と感じ、演出をする上でとても助けられたと語った。また、これからの映画界を担う二人と一緒に現場を共有できたのはいい経験だったと振り返っていた。
なお、この作品の主題歌としてVaundyの書き下ろし楽曲「まじで、サヨナラべぃべぃ」が使われている。
短編映画「ラストシーン」はApple Japan 公式YouTubeチャンネルで、舞台裏動画とともに見ることができる。
個人的にも最初から最後までグッと引き込まれる映像、そしてシナリオにiPhoneで撮影されているのを忘れてしまうほどのインパクトを受けた。まずは本編をみて、さらに舞台裏動画も一気に見てもらいたい。そして、iPhoneの可能性もさることながらやはりこの作品自体の素晴らしさを感じていただきたい。