
ネットで一度何かを調べると、その後しばらく同じような広告がついて回る。買おうか迷っていただけのモノが、別のサイトでもSNSでもしれっと出てくる。便利と言えば便利だけど、正直ちょっと気持ち悪い。自分の動きを、どこかで誰かに見られている感覚がある。
その「見られている感覚」の正体が、ウェブ上のトラッカーだ。そして、そこに焦点を当てた新しいAppleのSafariのCMが公開された。
そもそもSafariは何が違うのか
Appleとプライバシー保護はまさに最重要なファクターだが、ブラウザとしてのSafariの特徴はなんだろうか。
まずわかりやすいのはバッテリーの持ちだ。公称では、Chromeで動画をストリーミング再生したときと比べて、バッテリー駆動時間が最大5時間長いとされている。さらに、Webサイトのアクセスも平均でChromeより45%速く読み込むとしている。
そしてもう一つが、プライバシー保護がデフォルトで効いていること。何も設定しなくても最初から守りに入ってくれている、というのがSafariの基本スタンスで、ここが今回の話の中心だ。
追いかけてくるトラッカーを止める
冒頭の「広告が追いかけてくる」現象は、クロスサイトトラッキングと呼ばれる。サイトをまたいで行動を追い、興味を割り出す仕組みで、その入口がサードパーティCookieだ。
Safariはここに昔から手を打ってきた。サードパーティCookieをブロックする最初のブラウザを作ったのが2005年。そして2019年にはデフォルトでその機能をオンにしている。

仕組みとしてはIntelligent Tracking Prevention(ITP)と呼ばれる機能で、機械学習で追跡ドメインを見つけ、追跡データをデバイスから消してくれる。プライバシーレポートを開けばブロックした数も見られるが、ウェブサイトの約70%にトラッカーがいるとされるから、思っているより身近な話だ。
既知のトラッカーからはIPアドレスも隠してくれる。そしてこれが全部、設定をいじらず最初から有効になっている。同じ保護を得るのに自分で追加設定が要るブラウザも多い中、この「何もしなくていい」というのは大事なポイントだ。
「指紋」で個人を特定させない
トラッキングはCookieだけではない。システム構成やフォント、画面解像度などを組み合わせ、デバイスの「指紋(フィンガープリント)」を作って追いかける手法もある。Cookieを消しても、これで辿られてしまう。
Safariはデバイス情報をあえて簡素に・統一して見せ、一人ひとりを特定しにくくしている。この対策は最近さらに広げられていて、ここまでやる競合はほとんどいないとのことだ。
さらにiCloud+の契約者なら「プライベートリレー」も使える。すべてのブラウジングのトラフィックでIPアドレスを保護するもので、ネットワークプロバイダーはもちろん、Apple自身ですらユーザーの閲覧履歴を把握できない設計になっている。プライバシーを「Appleに預ける」のではなく、ユーザーだけのものという考え方だ。
iPhoneでもMacでも、拡張機能も
iPhone、iPad、Macを使い分けている人は多いと思うが、この3つでは同じプライバシー機能が使える。デバイスはサイトに「自分はこういう端末だ」と一応伝えるものの、さっきのフィンガープリンティング対策が効くので個人は特定されにくい。どの端末でも箱から出した瞬間からプライベートブラウジングが守られていて、「iPhoneは安心だけどMacは別途設定が必要」みたいな差はない。端末ごとに気にしなくていいのは、Apple製品を使う大きなアドバンテージとも言える。
ブラウザの拡張機能は使い勝手を自分好みにできる便利な存在だが、ウェブサイト上で入力した文字やパスワード、クレジットカード情報にアクセスできる場合がある、というのは案外知られていない。便利さの裏で、けっこう深いところまで覗ける立場にいるわけだ。
Safariでは、拡張機能がアクセスできる情報をユーザー側でコントロールできる。特定の日だけ、特定のサイトだけ、と限定できるので、他のブラウザで起きている拡張機能まわりのトラブルを入口で避けられる。
本当の意味での「プライベート」
プライベートブラウジングという概念そのものを最初に持ち込んだのも、2005年のSafariだ。訪れたサイトや検索内容、入力したテキストが記録されないのに加え、iPhoneやMacならFace IDやTouch IDでプライベートタブにロックもかけられる。人にデバイスを渡したときに勝手に開かれる心配も減る。
さらにリンクに紛れ込んだ余計な追跡情報を取り除くLink Tracking Protectionや、プライベートブラウジング用に別の検索エンジンを選ぶ、といった細かい配慮もある。
結局、いちばんいいのは「考えなくていい」こと

このように並べてみるとSafariがやっているのは、クロスサイトトラッキングを止め、拡張機能の覗き見を抑え、本当の意味でのプライベートな閲覧を用意する、という話だ。
ただ、今回一番いいと思ったのは、機能の数より、それらが最初からオンになっていることだ。プライバシーは本来、毎回意識して守るものじゃなく、意識しなくても守られているのが理想だ。お気に入りのデバイスを使っているときに、それが安心かどうかをまず考えなければいけないというのは健全じゃない。安心して使えるというのが、当たり前というのを実現しているのはとても大切なことだと思う。
