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Appleはなぜ、50年間人々をワクワクさせ続けられたのか ー 創業50周年に寄せて

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2026年4月1日、Appleが創業50周年を迎える。

それを記念して、アメリカ・ニューヨーク、Apple Grand Centralでのイベントを皮切りに、世界各国で50周年イベントが開催されているが、日本でも2026年3月27日(金)、Apple表参道で世界的なクリエイターでVirtual ArtistのMori Calliopeが出演する特別なセッションが開催される。

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Appleの共同創業者であるSteve Wozniak(左)とSteve Jobs(右)

1976年4月1日、Steve JobsとSteve Wozniak、そしてRonald Wayneの3人がJobsの実家のガレージで立ち上げたApple Computerが、半世紀を経て今も世界の最前線に立ち続けているというのは、改めて考えるとすごいことだと思う。テクノロジーの世界では、かつての巨人があっという間に姿を消すことも珍しくない。50年という節目に、Appleが何を変えて、何を変えなかったのかを自分の体験と重ねながら振り返ってみたいと思う。

音楽の専門学校で出会った初めてのMac

はじめて僕がMacに触れたのは、音楽の専門学校に通っていた頃のことだ。それまでほとんどコンピューターも触ったことなければ、音楽もやったことないのに、なぜかコンピューターミュージックをやろうとその学校に入ったのは、今思ってもまともな判断ではなかったと思うけど、それがAppleとの出会いになり、今の自分に繋がっているから不思議なものだ。

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専門学校を卒業した頃に登場するのがiMac

学校の教室に置いてあったのはMacintosh G3 DT266。当時はWindowsが主流で、周りにMacを使っている人はほとんどいなかった。正直なところ最初はWindowsもMacもそこまで区別がついているわけでもなく、とりあえず目の前にあったのがMacだったというだけだった。ただ触ってみると、フォントの美しさやソフトウェアデザインの洗練さに引き込まれた。

……と少し飾って書いてみたが、おそらく当時は文字がなんとなく綺麗だとか、OSのデザインがなんかカッコいいという漠然とした印象だったと思う。

それでも、Macにもっと触りたいと自然に思わせるものがあった。当時の自分にはそれが何なのかうまく説明できなかったけれど、あのワクワクだけははっきりと残っている。

学校だけでは飽き足らず、家でも触りたくなって、中古のPower Macintosh 8600を買った。インターネットに繋ぐために家族に交渉もした。今思えば、Macを使うことで何か新しいことができるんじゃないかという、確信に近いものを感じていたのだと思う。

それからずっとMacを使い続けて、iPod、iPhoneが登場して、iPad、Apple Watch、AirPodsと、気づけば手元のApple製品はどんどん増えていった。自分が生きている中でかなりの時間を、Appleのプロダクトと一緒に過ごしてきたことになる。そしてその間、何度も「また新しいことをやってくれる」という気持ちにさせられてきた。

Appleが50年で変えてきたもの

Appleがこの50年間で変えてきたものを考えた時に、多分頭の中に色々なことを思い浮かべる人がいると思う。

ただ、大きく捉えると、Appleがやってきたことは一貫していると思う。最先端のテクノロジーを、誰もが自然に使えるものとして届け続けてきた、ということだ。難しい技術を難しいまま渡すのではなく、触れた瞬間に「おっ!」と思わせる形に変えて、人の手に届ける。その繰り返しが、Appleの50年だったんじゃないかと思っている。

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1984年に発売されたMachintochとSteve Jobs

その最初が、1984年に登場した初代Macintoshだった。当時のコンピューターはコマンドを文字で打ち込むCUI(Character User Interface)が当たり前で、専門的な知識がなければまともに使えないものだった。Macintoshはそこに、アイコンやウィンドウをマウスで操作するGUI(Graphical User Interface)を持ち込んだ。画面の中にデスクトップという概念を作り、ファイルをゴミ箱にドラッグして捨てる。今では当たり前すぎて意識すらしないその操作が、当時はまったく新しいものだった。(厳密には1983年に登場したApple LisaがGUIを採用した最初の一般向けコンピューターだったが、非常に高価だったため普及には至らなかった)

コンピューターを専門家のものから誰でも使えるものに変えてしまったのがMacintoshで、コンピューターの定義を改めて示したものだと思う。自分はまだ子供でリアルタイムでは体験していないけれど、あの時代にそれを見た人たちが感じたワクワクは、今想像してもものすごかったんじゃないかと思う。

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音楽の聴き方を根本的から変えたiPodが2001年に登場

2001年に登場したiPodも、音楽の体験をまるごと変えた。当時の音楽の持ち歩き方といえば、CDウォークマンかMDプレーヤーが主流で、僕も当時は、CDウォークマンで20枚ほどのCDを持ち運びながら音楽を楽しんでいた一人だ。外で音楽が楽しめるという素晴らしい体験の一方、聴きたい曲を入れ替えるたびにディスクを取り出し、入れ直す必要があった。

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iPodのCMといえはこのシルエット、CMのインパクトも絶大だった

そこに「1000曲をポケットに」というコンセプトで登場したiPodは、自分の持っている音楽ライブラリをまるごとポケットに入れて持ち歩けるという、それまでになかった体験を作り出した。さらに2003年に始まったiTunes Music Storeは、音楽を1曲単位でデジタル購入するという概念を広め、CDショップに足を運ばなくても聴きたい曲をすぐに手に入れられる世界を作った。

音楽業界にとっては激震だったと思うが、ユーザーにとっては純粋に便利で、音楽がより身近になった時代でもあった。iPodとiTunesがなければ、今のサブスクリプション型の音楽ストリーミングサービスの世界も、もう少し遅れていたかもしれない。

そしてもう一度、世界をひっくり返したのが2007年だった。

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iPod+Phone+Internetの3つの革命的な製品と紹介

2007年1月9日のMacworld Expo 2007の基調講演、Steve Jobsがステージに立ち、「今日、Appleは3つの革命的な製品を発表します」と切り出した。ワイドスクリーンのiPod、革命的な携帯電話、そして画期的なインターネット通信デバイス。3つのキーワードを繰り返すたびに会場の期待が膨らんでいく中、「これらは3つの別々のデバイスではありません。1つのデバイスです」という言葉で会場が大興奮となった。

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2007年にSteve JobsがiPhoneを発表

面白いのは、あの3つの中で会場のリアクションが一番薄かった「画期的なインターネット通信デバイス」という部分が、結果的に最も世界を変えた要素だったということだ。Appleがスマートフォンを出すということが話題の中心であった中、そのスマートフォンが常にインターネットにつながっている存在になったことが、その後の社会をどれだけ変えたか、今となっては言うまでもない。

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タッチスクリーンディスプレイを搭載したのは画期的だった

iPhoneが登場する前と後では、スマートフォンの定義がまるごと書き変わった。それまでのモバイルデバイスはボタンやキーボードで操作するものだったが、iPhoneは指で直接画面に触れて操作するタッチスクリーンディスプレイを採用した。

ピンチでズームし、スワイプでページをめくる。今では当たり前すぎて忘れてしまいがちだけど、あの直感的なUIは当時まったく新しいものだった。あのプレゼンを見て感じた興奮は、今振り返っても忘れることができないし、個人的に、今まで見てきたすべての発表で今でも一番心に残っているのはあの瞬間だ。

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2010年に発表されたiPad

その後、iPadもApple Watchも同じように既存の常識を塗り替えてきた。iPadが登場した時、「大きなiPhoneに何の意味があるのか」という声は少なくなかった。マルチタッチの直感的な操作をより大きな画面で、それでも持ち歩けるサイズで実現するという、新しいカテゴリーを作り上げ、、クリエイターや学生、医療現場など、それまでPCが入り込めなかった場所に入っていった。

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2015年にApple Watch発表

Apple Watchも、そもそも腕時計型のデバイスに対して懐疑的な見方が多い中で登場した。Appleとしても当初から健康管理デバイスとして設計していたわけではなかったが、今では心拍や血中酸素、心電図まで計測できる存在になり、それが日常に欠かせなくなっている人も多い。Appleが新しいプロダクトを出すたびに「これ、本当にいる?」という疑問が生まれ、しばらくするとその答えが当たり前になっている。そのパターンが、ずっと繰り返されてきた。

Appleが変えなかったもの

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一方で、50年間ほとんど変えなかったこともある。むしろ、そちらの方が大事な気がしている。

Jobsが繰り返し語っていたフィロソフィーに、「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」というものがある。2011年3月のiPad 2発表の場でも、「技術だけでは不十分で、テクノロジーとリベラルアーツ、人文科学が結びついて初めて、心が躍るような結果が生まれる」と語っている。

「心が躍るような」という部分が好きだ。スペックでも機能の数でもなく、心が動くかどうか。それがAppleの作るものに触れたときのワクワクの正体なのかもしれない。Jobsが亡くなってもう15年近く経つけれど、今のAppleを見ていても、この哲学はちゃんと引き継がれているなと感じる。

プライバシーへの姿勢も、Appleが50年間変えていないものの一つだと思う。

今は「プライバシー」の重要性がだいぶ認知され様々なプロダクトにも反映されてきているが、Appleはずっと一貫してこの立場を取り続けてきた。「あなたのデータはあなたのもの」というのは、Appleにとってマーケティングのスローガンではなく、設計の原則だ。

その姿勢が一番際立って見えるのが、今のAIの時代だと思う。各社がこぞってユーザーデータを活用したAIサービスを打ち出している中で、Appleが提供するApple Intelligenceは、設計の根本が少し違う。多くの処理をデバイスの中で完結させ、クラウドへの処理が必要な場合も、Appleを含む誰もその内容を見られない仕組みになっている。便利さとプライバシーはトレードオフだという前提を、Appleはずっと疑い続けている。

もちろんそれによってAIについては遅れをとっているのではないかという批判もある。Appleもそれはわかっているとは思うが、その制限がある中でもユーザーを第一に考えながらイノベーションを起こすことを考えているのではないだろうか。

スマートフォンに個人情報のほぼ全てが入っている今の時代に、この姿勢がどれだけ重要かは言うまでもないと思う。そしてそのプライバシーに関するポリシーを50年間変えずに続けてきたというのは、やっぱりすごいことだと思う。

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Appleは創業当初からアクセシビリティに取り組んでいた

アクセシビリティへの取り組みもまた、Appleが長年ずっと突き詰めてきたものの一つだ。視覚や聴覚、運動機能に制限のある人でもAppleのプロダクトを使えるように、という姿勢は創業期から変わっていない。VoiceOverや、スイッチコントロール、音声でデバイスを操作できる機能など、Appleは毎年着実にこの領域を深めてきた。

派手に語られることは少ないけれど、テクノロジーを「誰もが使えるものにする」というAppleの根本的な思想が、最もストレートに現れている部分だと思う。「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」というフィロソフィーは、こういうところにも確かに息づいている。

環境への取り組みも、Appleが長年一貫して力を入れてきた分野だ。2018年にはAppleの全世界の施設が100%再生可能エネルギーで運営されるようになり、さらにサプライチェーン全体と製品のライフサイクルを通じてカーボンニュートラルを目指すという目標を掲げている。テクノロジー企業としての影響力を、地球環境に対しても責任ある形で使おうとする姿勢は、「世界をより良くする」というAppleの信念の延長線上にある。

変えたものと変えないものが交差する、今

テクノロジーが進化するたびに、世界は少しずつ良くなってきたと思っている。できなかったことができるようになり、届かなかった人に届くようになり、気づかなかったことに気づけるようになった。そしてその変化の中心に、Appleはずっといた。

Apple Vision Proも、その流れの続きだと思っている。

Apple Vision Proについては、日本での発売前にどうしても我慢できなくてハワイまで買いに行った。今振り返ってみるとちょっと冷静さを欠いていたのかもしれないけど、「世界を変える次のデバイスかもしれない」という予感がそうさせた。

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2024年2月2日ハワイ・アラモアナにあるApple StoreでApple Vision Proを初体験してその場で購入

もちろん現実に使い続ける時にまだまだ課題は多いし、価格を含めて世界を変えるにはもう少し時間がかかるだろうとも感じた。ただ、装着した瞬間に広がるあの空間は、やっぱりこれはなんかすごいぞという気持ちにさせてくれた。あのiPhoneの発表を見た時の、あの感じに少し近いものがあった。

AIが当たり前になり、空間コンピューティングが広がっていった時、Appleのプロダクトはどんな姿をしているか、今の時点では想像もつかない部分の方が多い。ただ、「ユーザーの創造性を拡張する」「プライバシーを守る」「心を震わせるものを作る」という部分だけは、どんな形になってもそこにあり続けるはずだという気がしている。

2007年のあのプレゼンで感じた、世界が変わりそうという期待感は、間違ってなかった。ただそれと同時に、世界を何度もひっくり返してきたAppleが、変えずに守り続けてきたものがあるというのも、使い続けてきた実感としてある。変えることへの勇気と、変えないことへの意志が、両方揃っているのがAppleという会社なのだと思う。

次の50年へ

最後に振り返りだけでなく、次の50年への期待を書いておこうと思う。

テクノロジーの進化は、これからさらに加速していくのは間違いない。AIが日常に溶け込み、空間コンピューティングが当たり前になり、きっと全く新しいデバイスが登場してくる。そのたびに社会は変わり、人々の暮らしも変わっていく。その変化が、良い方向に向かうかどうかは、作る側と使う側の両方の哲学が重要になってくる。

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Think Differentキャンペーンは強力なメッセージだった

ここで思い出すのが、1997年のThink Differentキャンペーンだ。業績が低迷し、倒産寸前まで追い込まれたAppleにJobsが復帰し、最初に打ち出したのは新製品の発表ではなく、自分たちの存在意義を示すメッセージだった。アインシュタイン、ボブ・ディラン、マーティン・ルーサー・キングJr.など、時代を変えた人々の映像に乗せて「クレージーな人たちがいる」というナレーションが流れ、「自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えているのだから」という言葉で締めくくられる。

創業から50年、ここは一貫して変わっていないと思う。Appleが今年公開した50周年のページにも、「テクノロジーに何ができるかではなく、あなたがテクノロジーを使って何をするか。それに尽きます」という言葉がある。

自分がどこまで見届けることができるかはわからないけど、次の50年も、そのワクワクが続いてほしいと思っている。新しいプロダクトが発表されるたびに驚きがあって、テクノロジーが誰かの人生を後押ししてくれて、良い方向に変えていく、そしてAppleのプロダクトを手にした誰かが何かが違うと感じる瞬間。そういう積み重ねが、テクノロジーと社会をつないでいくのだと思うし、Appleにはそれを作り続けられる会社であって欲しいと思う。

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リンクマン

リンクマン

コンテンツクリエイター

2011年よりiPhone、MacなどApple周りを中心にあなたの欲しい・知りたいを"つなげる"ブログとして、ウェブサイト「Linkman」を立ち上げる。Linkmanでは、主観抜き、報道スタイルの記事制作がモットーだが、違ったアプローチもしてみたくなり新しいチャレンジとして「Gadgetouch」を始める。そのほかにも、動画配信サービスの立ち上げ、アイドル番組などの制作・配信現場を経験。動画や音楽、機材を中心としたフリーランスの何でも屋として活動しながら、ただひたすらに浦和レッズを愛する、東京出身の元・サッカー少年。

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