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Apple Watchが知らせた心臓からのメッセージ、心房細動の早期発見と医療現場での可能性

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Appleは6月2日、Apple Watchの新しいCM「Apple Watch | 心臓からのメッセージ」を公開した。今回はこれに先立ち、CMに出演している鈴木正博さん、そして杏林大学医学部附属病院 循環器内科主任教授の副島京子医師に話を聞くことができた。

Apple Watchに気づかされた心房細動の兆候

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CMに出演している鈴木正博さん

今回のCMの主人公である鈴木正博さんは、51歳のモノづくり系のエンジニアで、趣味はヘビメタのライブ鑑賞とサイクリングという非常にアクティブな方だ。金属アレルギーのため腕時計をあまりしないタイプだったが、サイクリングの記録やサイクリング中の心拍確認、さらにはコロナ禍でマスクを着用していてもiPhoneのロック解除ができる機能がリリースされたことをキッカケに、2022年にApple Watch SEを購入した。

この時点で健康状態に心配などはなく、購入後はサイクリングなどでApple Watchを活用し、200kmを超えるライドで心拍数やカロリー消費、速度などの様々なデータを記録するなど、便利に使っていたそうだ。

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Apple Watchを使い始めて約1年半後の2023年6月のある日、テレワーク中に普段とは違うバイブレーションと通知音がApple Watchから届く。画面に表示されたのは「心臓のリズムに心房細動を示唆する不規則な心拍がみられます。」というメッセージ。この通知には「ぜひ医師に相談してください」という言葉が書かれており、普段から取扱説明書などを書くエンジニアの立場から「よっぽど自信がないとこういう風に書けない」と感じ、真剣に受け止めようと考えたと話す。

通知を受けて、家族と一緒に心房細動について調べたところ、循環器内科を受診する必要があることを知り、家から5分ほどの場所にあったクリニックをその日のうちに受診。病院の心電図検査でも心房細動であることが確認された。その後ホルター心電図や血液検査などもをするも、鈴木さんには高血圧や高齢といった心房細動のリスク要因がなく、しばらく様子を見ることになったそうだ。

ただ、不安を感じた鈴木さんは、心電図アプリが使えないApple Watch SEから、心電図アプリが搭載された当時の最新モデルのApple Watch Series 8にすぐに買い替えたそうだ。

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そしてその約2ヶ月後、サイクリング中に左胸がバクバクするという症状を感じる。Apple Watchを見ると、心拍数が異常に高い198を示していた。これは、トレーニング時の最大心拍数の目安とされる「220-年齢」で計算される鈴木さんの目安(約170)を大きく上回る異常な数値だ。すぐに路上でしゃがみこんでApple Watchの心電図アプリで計測すると、やはり心房細動と表示される。その後、ファミレスで休憩中に再度測定しても心房細動が記録されたので、サイクリングは中止し、電車で帰宅する。さらに、帰宅後の夜にも心房細動の通知が来て、心電図アプリで測るとやはり心房細動と表示されたそうだ。

週末の出来事だったため、週明け月曜日の朝一番でクリニックを受診し、Apple Watchの心電図アプリで取得したPDF形式の記録を印刷して医師に提出。病院での心電図検査でも心房細動が確認され、すぐに手術が決定した。大学病院への紹介を経て、精密検査の後、2023年10月に心臓カテーテルアブレーション手術を受け、無事に治療をすることができた。

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鈴木さんは、リスク要因がなく自覚症状もほとんどなかった自身の心房細動が、エクササイズ目的で購入したApple Watchからの通知をきっかけに早期に発見され、手術という形で治療できたことを「ラッキーだった」と振り返りる。

また、実は心臓の手術の1年前に自転車で転倒し鎖骨を骨折した際にも、Apple Watchの緊急通報機能が作動しており、もし意識を失っていたら自動で緊急通報サービスに連絡してくれた可能性があることにも触れ、Apple Watchが「安心」と「自分の健康」にとって役立つ存在であり、自分が自覚できない体の変化を常に記録できるという意味で「なくてはならない存在」になったので、これをきっかけにApple Watchをつける人が増え、病気が早く見つかったり、より健康的な生活を送れる方が増えたらいいなと話してくれた。

Apple Watchの医療における有効性と課題

杏林大学医学部循環器内科教授の副島京子先生は、心房細動が不整脈の中で最も一般的でありながら、自覚症状がなく「水面下」に潜んでいるケースが多いと話す。このような無症状の心房細動は、偶然の機会(ウェアラブルデバイスや血圧計など)や、最悪の場合、脳梗塞を起こして初めて見つかることが多いと指摘する。

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杏林大学医学部附属病院 循環器内科主任教授の副島京子医師

今回の鈴木さんのケースについて「あの段階で見つかったというのはすごくラッキーだった」と解説。特に、ドキドキする症状が出た際にApple Watchで心電図を記録できたことが、迅速な診断につながった最大の要因であると述べた。もしApple Watchがなければ、診断まで時間がかかり、治療が遅れる可能性があったと話す。

また、心房細動の診断には、一般的にはホルター心電図(最長14日間)での計測が行われるが、Apple Watchは毎日長時間装着でき、日常的な心拍リズムをモニターできる点が優れており、ごく短時間しか出現しない心房細動も捉えることができると解説する。また、Apple Watchは他社のウェアラブルデバイスに比べ、心電図がきちっと綺麗に取れるという点で明らかな差があり、正確性については、他と比べようがないと評価していた。

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心電図アプリについて、健康な人でも定期的に測定することに意味があると副島先生は話す。普段から自分の心電図に慣れておくことで、いつものパターンと違う場合に異常に気づきやすくなることや、症状がない隠れた異常の発見につながる可能性もあると話していた。

また、混同しがちなのが、脈波計と心電図計の違い。脈拍数だけでは原因が特定できない不整脈を診断するには、心電図が必須であるため、Apple Watchでそれが手軽にできることの意義は大きいと強調していた。

医療現場におけるApple Watchで得られたデータ活用については、患者自身が記録した心電図データを医師に提供できる点が非常に価値が高いと評価する一方、課題もあると話す。

電子カルテシステムが乱立していて共通のフォーマットになっていないこと、病院のセキュリティ意識の高さから個人情報を含むデータをシステムに取り込むことへの障壁があること、さらにこうした個人デバイスからのデータ参照に対して保険点数がついていないことから診療報酬に結びつかないなど、データ活用という点でまだ課題が多いようだ。

Apple Watchを普段からつける意味

鈴木さんは、自覚症状がない心房細動の早期発見により、早期治療につながり、現在症状が出る前と同じように、ヘビメタのライブやサイクリングを楽しんでいるそうだ。Apple Watchでその兆候を捉えることができなかったら発見はもっと遅くなっていたかもしれないし、より大変な治療をすることになったかもしれないと思うと、本当にこの段階で発見できたことが大きな分岐点だっただろう。

僕も普段からApple Watchはつけている方だが、改めて日常的につけていることの重要性を再認識し、最近他のデバイスを使っていた睡眠モニタリングもApple Watchに戻した。現在ではお風呂に入っている以外はほとんどの時間Apple Watchをつけているという状態だ。

今回の鈴木さんのエピソードは心房細動の早期発見できたということだったが、これは他人事などではなく、誰にでも起こり得る話でもあるのだ。そう考えるとApple Watchをつけておくことで、普段の健康状態もモニタリングしながら、そのリスクに気づく可能性を上げられるかもしれない。これはとても大きなポイントではないだろうか。そして、まだ課題の多いとされる医療現場でさらにデータの活用できるようになり、より健康的な生活を送れる人が増えるという形になって欲しいと願うばかりだ。

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コンテンツクリエイター

2011年よりiPhone、MacなどApple周りを中心にあなたの欲しい・知りたいを"つなげる"ブログとして、ウェブサイト「Linkman」を立ち上げる。Linkmanでは、主観抜き、報道スタイルの記事制作がモットーだが、違ったアプローチもしてみたくなり新しいチャレンジとして「Gadgetouch」を始める。そのほかにも、動画配信サービスの立ち上げ、アイドル番組などの制作・配信現場を経験。動画や音楽、機材を中心としたフリーランスの何でも屋として活動しながら、ただひたすらに浦和レッズを愛する、東京出身の元・サッカー少年。

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