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iPadで描く、デイヴィッド・ホックニーの世界とは?東京都現代美術館のWORKSHOPをリポート

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2023年7月15日(土)~ 11月5日(日)東京都現代美術館で行われている「デイヴィッド・ホックニー展(主催:東京都現代美術館、読売新聞社)」。

デイヴィッド・ホックニーは、今を生きる画家である。

Hockney01

目の前に見える世界をそのまま具体的に描く「具象絵画」のジャンルで1960年代のポップアートを牽引し作品を作り続け、御年86歳。世界中で精力的に個展を行っていることでも知られ、パリのポンピドゥセンターでは60万人、2012年ロンドンのロイヤルアカデミー開催された個展でも60万人を動員した。特にロイヤルアカデミーでの展示では、当時70代のホックニーが、絵画のアプローチにiPadを取り入れた発表を行い、人々に斬新な驚きを与えた。

元々ホックニーは、作品にテクノロジーによる新しい技法を取り入れ続けてきた。80年代にはカラーレーザーコピーで版画を作っているし、FAXで作品制作を行ったこともある。1990年に発売されたMacintosh IIfxを購入し、それで絵を描いている。(当時は再現できるプリンターがなかったため、作品化はされていない)

彼の思想のひとつに「絵画は洞窟壁画から始まる」というものがある。自身が古代から始まる絵画の歴史の中にいる、という考え方があるからこそ自然と、絵筆やキャンバスを超えて、その世代の技術を取り入れることが出来ているのだろう。iPadが登場した時も、すぐ取り入れようと考えた。

取り入れた理由を彼は3点あげている。まず「バックライトであること」普通のキャンバスは光らないがiPadは光る。彼は「バックライトがある関係で、光や色の認識が変わった」と語っている。ツールとして面白く感じられたのだろう。

続いて「素早く描ける」こと。ホックニーの代表的な絵画にイーストヨークシャーの春を描いたものがあるが、春を描く理由は、日々、光や自然の様子がドラマティックに変わっていくからだ。その移り変わりを日々書いていくためには、油絵だと6週間かかってしまう。それでは、刻々と移り変わる春の風景を描けない。iPadであればブラシをすぐに選べて、色も自由に選べる。それがiPadを選んだ理由。

今回も、そうして制作されたもののうち、90作品を展示している。最後は「色を自由に重ねられる」こと。水彩画は、色を重ねるのが難しい。薄い色から順じゅんに色を重ねていかないと、濁ってしまうが、iPadならどんな色でも重ねられる。あおい水溜まりの上に白で水模様が描けるのはiPadならではだ。

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今回展示されている作品で印象的な「春の到来・イーストヨークシャー」は、まさにそのiPadで作られた巨大な作品だ。10年以上愛用しているApp「Brushes」の開発者とともに新しいブラシを作り、それを使って90mの作品を1年で仕上げた。展示では新しい表現を手に入れたホックニーのより複雑な表現を間近に楽しむめる。

ワークショップ「iPadで絵を描こう」

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デイヴィッド・ホックニー展では、一般の人が参加できるワークショップも行われていた。取材した「iPadで絵を描こう」は、連日満員。ホックニー同様にiPadで絵を描ける体験ということで、こどもから大人まで世代を問わず様々な人が参加していた。

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このワークショップではiPad AirとApple Pencil、そして純正のメモアプリを使って、目の前テーブルに置かれた花を描く。最初にiPadで絵を描くための簡単な説明を受けた後、自由に描いていく。

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参加者の描く様子を見ていると、ペンの太さや色を重ねながら、より立体感や深みのある絵が出来上がっていく。これはホックニーも語るように、色を自在に重ねられるiPadのメリットだろう。こういった絵がわずかな時間に、そしてほとんど下準備もいらずに書けてしまう。

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ワークショップの最後には完成した絵をプリントアウトして持ち帰る。実際に印刷したものを手にして、参加者の方嬉しそうにしていたのが印象的だった。

ホックニーは現在86歳。我々と同じ時代を生きる現役の作家だ。その作家がiPadを使った技法を使うという新しいチャレンジで作品を発表し続けていることに励まされた。来場者の中には「世界の見方が変わった」というアンケートもあったそうだ。

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アートは難しい、知識がないとダメではないかと思う人もいるかもしれないが、ホックニーの作品は誰が見ても楽しめる作品だ。

昔ながらの技法で描かれたものから、iPadという最新の技法で描かれたものまで、ホックニーの世界観の詰まった展示に、ぜひ足を運んで体感してほしい。

ガジェタッチ(リンクマン・弓月ひろみ)

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