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レポート

スポーツデータ活用を提案する、台湾デジタル発展部のアジア初の取り組みとは。SPORTEC2023取材リポート

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2023年8月2日から4日まで東京ビッグサイトで、日本最大のスポーツ・健康まちづくり総合展SPORTEC2023が開催された。

日本の大小さまざまなスポーツ関連企業やテクノロジー企業が集う中、今回は台湾からも出展があった。出展したのは台湾政府の「数位発展部」で、日本ではデジタル発展部とも訳される。デジタル発展部の大臣はオードリー・タン氏で、今回この出展に伴い、黄 雅萍氏がテープカットにも参加する力の入れようだ。

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(正面:デジタル発展部 黄 雅萍氏)

なぜ今回、台湾のデジタル発展部が、一件何も関係がないように思える「SPORTEC」に初出展を行ったのか。それは台湾が国民のヘルスケアデータを民間企業に解放する公益プラットフォームを発表したからだ。

Googleや Microsoftなどさまざまなテクノロジー企業がスマートフォンやウェアラブルデバイスを通じてデータを収集しているが、台湾ではそのデータを国民の協力を得て国が収集し管理、そして民間企業にデータを無償で提供するという取り組みだ。運用可能なデータは、生理学データ、スポーツデータ、フィットネスデータなど60万件を超えるもので、データはプライバシーに配慮し、個人情報が紐づかない形で管理されており、利用する場合も公共性が求められている。

どこか1社のビッグテックがデータを独占するのではなく、これを国の資産として活用しようというのが今回の台湾の取り組みということになる。

思想はEUのデータガバナンス法に基づいたものだが、アジアでこうした取り組みを行うのは台湾が初めてのこと。今回は実際にデータを活用している台湾5社のブースを取材した。

H2U

台湾で、最大の健康メディアプラットフォームやスポートコミュニティなどを展開する大企業。なんと台湾の労働人口の30%の会員数を誇っている。

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主に健康に関するデータを扱っており、4つのマラソン大会も開催。これまで50万人の参加者に個別記録などのデータを提供している。

健康メディア「早安健康」は会員数100万人を抱える健康に関するトピックスを扱うメディアとして台湾でNo.1。さらに、スポートコミュニティ「健康筆記」という台湾最大のスポーツSNSコミュニティも運営中だ。

100社以上の企業に看護師などを派遣して社員の健康管理をするシステム「H2U eXpart」や台湾でユーザー利用率60%の検診プラットフォーム「H2U Examine」を提供。オンラインだけでなくオフラインでも、国民の健康に役立つ企業活動を行っている。

Uniigym

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Uniigymは特別な専用機器を使わず、スマートフォンやタブレットのカメラを使って人の動きをキャプチャーして、さまざまなフィットネスアプリに利用できるようシステムを開発している会社だ。

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ゲームのようにエクササイズができることが最大の特徴で、AIによる解析を利用することで正しいフォームでエクササイズできているかを判別ができる。ユニークなのは「ARコーチ」でいつでもプロフェッショナルなインストラクターと一緒に自宅にいながらエクササイズできる。

また、SDKも用意されており、他のサービス事業者が必要なデータを使ってさまざまなサービスを展開することも可能にしているそうだ。

Space Capsule

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Space Capsuleは、モーションキャプチャーが可能なファブリックテープを開発している会社。

ウェアにチップを内蔵したファブリックテープを組み込むことで、通常のシャツと同じように着るだけで、全身のモーションキャプチャーが可能だ。特別なセンサーは必要ない。

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リアルタイムキャプチャーが可能で、モーションキャプチャーでは難しいと言われる微妙な体の傾き、捻れなども検出できる。例えばゴルフのスイングの解析を、スマートフォンやウェアラブルデバイスを使ってその場で確認、修正できる。

dBio

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dBioは靴のインソールに搭載するセンサーを開発する会社。インソールのため、どんな種類の靴にも対応できて、体の傾きや体重のかかり方、姿勢などをデータで取得、アプリで確認できる。

リアルタイムで、1歩1歩のデータを取得できるので、スポーツだけではなくリハビリなどへの活用も期待できる。

ウェアラブル聴診器も開発しており、24時間リアルタイムに心音などの解析が可能で、心拍数の変化などによる緊急のアラート通知にも対応している。

WhiizU

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WhiizUは、自転車を専用のローラーに乗せてバーチャルサイクリングができるサービスを提供している会社。

実際のロードレースと同じコースを走り、実際の記録と比較しながらゲームのように楽しむことができ、走行データをアップロードすることで、AIによる解析も行える。また、eスポーツの大会にもスポンサードしていて、コスチュームやヘルメットのカスタマイズなども可能になっており、チーム名やスポンサーロゴなどを掲載できる。

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ちなみに、毎年宇都宮で開催されているジャパンカップサイクルロードレースのコースを走ることもできるそうだ。

新しいデータ管理・活用の提案

こういったヘルスケアのデータは非常に多くの個人情報を含んでいるため、運用や活用ができるところは非常に限られているがゆえ、一部のビッグテックに情報が集まるという形になっているが、台湾の取り組みはそこに一石を投じる形になるかもしれない。

より多くの企業がデータを使えるというメリットは、新しい産業・雇用を生み出す可能性があり、医療などの発展に役立つかもしれない。どこがデータを適切に管理し、活用するかという点ではこの台湾の取り組みは非常に面白い。日本国内での活用にも期待ができそうだ。

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リンクマン

リンクマン

コンテンツクリエイター

2011年よりiPhone、MacなどApple周りを中心にあなたの欲しい・知りたいを"つなげる"ブログとして、ウェブサイト「Linkman」を立ち上げる。Linkmanでは、主観抜き、報道スタイルの記事制作がモットーだが、違ったアプローチもしてみたくなり新しいチャレンジとして「Gadgetouch」を始める。そのほかにも、動画配信サービスの立ち上げ、アイドル番組などの制作・配信現場を経験。動画や音楽、機材を中心としたフリーランスの何でも屋として活動しながら、ただひたすらに浦和レッズを愛する、東京出身の元・サッカー少年。

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